宇和島方言入門

宇和島語辞典の入り口


アクセントについて

(篠崎充男著・「宇和島地方の方言」より、引用承諾済み)


昭和56年から3年間、文化庁と愛媛県教育委員会
との共同事業として、愛媛県東予、中予、瀬戸内海
島嶼部、南予では宇和島市を中心に方言調査が行わ
れた。当時60歳以上の男女の会話を記録し活字化
する方法がとられた。

 愛媛県のアクセントは変化に富み、多種である。
大別すると甲種、乙種、一型、特殊型アクセントに
分類される。川之江、三島地方から松山市周辺まで
は甲種アクセント・京阪アクセントの領域である。
これは京阪から流れて香川・徳島に及ぶ。上浮穴地
方は特殊型、大洲市から喜多郡、野村町から肱川水
系沿いに一型アクセント・平板なアクセントが展開
する。これは九州の熊本地方と同じである。吉田町
から宇和島市、南宇和郡から土佐、宿毛市周辺にか
けては乙種アクセント・東京アクセントである。

 これは九州の大分県と同じである。では、八幡浜
市や宇和地方はどうであるかというと、ちょうど中
間に位置し、一型と乙種アクセントが混在するとい
う微妙な地域をなす。更に前述のように宇和島地方
から北、南宇和郡、高知にかけての四国西南部地域
を特に「謂南方言」として区別する。途中、津島町
の山間部に行くと、やや高知なまりの言葉が出てく
る。一方、予土線に乗り込み、宇和島から三間町、
広見町、松野町に行くと乙種アクセントであるが、
高知県江川崎に着けば、途端に高知の特殊型アクセ
ントに囲まれる。また、興味深いのは宇和島湾に浮
かぶ九島は平板な一型アクセントなのである。宇和
島湾に面した他の漁村にもこの一型アクセントが見
られる。この九島から海を隔てた東宇和郡明浜町に
行くと、また一型アクセントに出会う。

 乙種アクセントである宇和島地方で、九島だけが
なぜ一型なのか、大洲や肱川流域、明浜地方となぜ
共通するのか。いつの時代にか、人々の移動があっ
たのか。島ゆえ一型アクセントの純粋性は保たれた。
「愛媛の方言」では乙種アクセントが次第に変移し
て一型と特殊型になったのではないかと考察する。

 このように見ていくと、愛媛、この伊予は方言・
アクセントの宝庫である。土佐と伊予の県境に行く
と、特殊型や一型と乙種が混在しているのも不思議
ではない。人々の足は言葉を長い歴史と暮らしの中
で運んできたからである。また、宇和島市から南宇
和郡を経て宿毛市周辺に出れば、「謂南方言」で、
乙種アクセントで違和感は全くない。ところが。予
土線に乗り、土佐の江川崎以東の各駅に着くと、そ
こは高知県の土着の言葉と特殊アクセントが強烈に
出てくる。小さな旅は言葉の不思議な出会いに揺れ
るのである。(参考「愛媛の方言」)

アクセント例    「 」が強い発音

-
松山 宇和島 九島
池を見る けをみ

-
血が赤い ちがあかい かい

-
机が並ぶ つくえならぶ つくえがらぶ

-
歌がよい たがよ

-
椿を売る きをうる ばきをう

-
命は重い のちはもい のちはおもい

-
手が  てが
打つ つ   うつ
かたち たち かたち
栄螺(サザエ) ざえ ざえ さざえ
山  やま
   

宇和島語辞典



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